網椅子の素材について(text:大橋力)
これから長くものづくりをしていくために、素材の選定において考えたことは継続的に同程度の質のものを仕入れることが可能であるかということです。その次に、その土地でとれたものを使うことです。木はその土地の気候・風土に根ざし、成長します。必然的に素材としても、その土地の気候・風土において、その暮らしに合うものになると考えています。
またこれだけ森林の多い国にもかかわらず、一般的な家具製作の場合、外材を使用することが多いですが、ここにも疑問を感じています。
これらの理由に合わせて、素朴な木目が魅力的であることから、栗を選びました。
木材は丸太で仕入れるようにしていますが、丸太の状態を見ることで、木の成り立ちを確認できます。
製材時、板の厚みや長さの指定が可能で、木の成り立ちに合わせながら、椅子の寸法に合わせた製材をしてもらっています。
こうすることで、木に極力負荷をかけず、捨てる部分も減らすことができるので、木材効率が上がります。
また板材と比べ、はるかに安価に仕入れることができます。
仕入れ時期は11~5月の間です。
冬の間は木の活動も穏やかで、木の中の水分も少なく、また気温が低く、菌の繁殖も少ないので
この時期に原木は市場に多く出てきます。市場で競り落とした材料を、地場の製材所で板の状態にしてもらい、仕入れています。
仕入れた板材は、冬の間にできるだけ、おおよその椅子の部材の形(棒状)に、荒木取りをします。
この材は約1年乾燥させておきます。厚みや幅によって乾燥期間は異なりますが、表面積と体積の差が大きいほど長くなります。
あくまで目安ですが、テーブルの天板用などは2年以上です。
材料として使えるようになったものから、椅子を製作する日数は、スツールで1週間で5脚、食事椅子で1週間で2脚程度です。
日数は製作内容によって異なります。
作業工程は、機械加工と手加工、座編みに大別されます。
まず機械を使い、部材を定寸に仕上げ、ホゾ組みをつくります。
ものによっては手加工でほぞをつくります。ホゾ組みができれば手加工に移ります。
まずはホゾ組みのそれぞれはめ合いの調整をし、その後、カンナや小刀などの刃物を使い、部材の仕上げを行います。
仕上げ後、接着剤を用い、組み立てます。
最後は座編みです。機械加工、手加工、座編みがそれぞれ1~2日間で行います。