今の時代、アート、ファッション、デザインの分野などと、古美術や生活工芸と言われているものが渾然となり、同じテーブルの上に乗って、何が一番美しく魅力的かと競う時代となりました。それはこれからさらに加速していくのだろうと思います。私は、ものの良し悪しの評価でなく、どちらかと言えば「何故良いと感じるか?」という自身の感受性について考えてきました。
色目や型、用途などがどれを取っても絶対的に良いというものも、僅かながら出会いました。それは役目を終えた古いものか、機能的なものに絞られます。幸運にも丹波で出会った人達の暮らしの中にも、良いものに出会いました。それらは役目を終えたコレクションではなく、暮らしと密接に結びついたものだったからこそ、私の感受性は身震いする程、揺さぶられました。機能と美しさとは両立しているものだと改めて思いましたが、そこに至るまでには、多くのものを見て、自分の感受性を鍛える必要があると思います。
良いものに出会う時、「人・技術・暮らし」などに重点を置いて見るよう心掛けています。それらは私の感受性を大きく揺さぶる要素であり、たとえ時代が変わり、環境が変化しても、良いものづくりの本質の部分だと確信しているからです。